高知土産のダークホース、それが「カステラ」
知人から「高知へ旅行に行く」と聞いた時、私は迷わずこうアドバイスします。
「もし時間があるなら、はりまや橋の近くにある『山本』のカステラを買って帰れ」と。
反応はいつも同じです。
「え、高知でカステラ? 長崎じゃなくて?」
「芋けんぴとか、鰹のたたきじゃないの?」
そう思うのも無理はありません。
しかし、高知市はりまや町にある和菓子店「菓仙 山本(かせん やまもと)」のカステラは、そんな既成概念を覆すほどの逸品なのです。
地元では知る人ぞ知る名店であり、お使い物やお祝い事の定番として絶大な支持を集めています。
今回は、そんな幻のカステラの魅力と、確実に入手するための方法をレポートします。
静かな住宅街に佇む、看板のない名店
お店があるのは、日本三大がっかり名所(失礼!)としても有名な「はりまや橋」から徒歩数分。
観光客で賑わう大通りから一本入り、鏡川沿いの静かな通りを進んだ先にあります。
繁華街の喧騒とは無縁の、落ち着いた住宅街の中にひっそりと暖簾を掲げています。

派手な看板やディスプレイは一切なく、一見すると普通の民家のよう。
しかし、朝の開店直後から、次々とお客さんが吸い込まれていきます。
そのほとんどが、事前に予約をしていた地元の方々。
彼らは慣れた手付きで予約名を告げ、黄色い包みを受け取っては足早に帰っていきます。
そう、ここのカステラは「予約必須」と言われるほどの人気商品なのです。
予約なしでの突撃、その結果は?
私はその「予約必須」という情報を直前に聞きつけ、ダメ元で朝8時の開店と同時に突撃しました。
ガラガラと引き戸を開けて店内に入ると、カウンターの奥には、既に黄色い包装紙に包まれた箱の山、山、山!
「うわぁ、これ全部予約分か……」と、その数に圧倒されつつ、恐る恐るお店の方に声をかけます。
「すみません、予約してないんですけど、カステラ買えますか?」
お店の方は優しく微笑み、「少しだけなら店頭分がありますよ」と答えてくれました。
勝った!! 勝利のファンファーレです。
0.5斤、1斤、1.5斤などサイズがあるようでしたが、迷わず一番食べやすいサイズを購入。
(※日によっては本当に予約分だけで完売することもあるそうなので、確実に手に入れたい方、特に本数を多く買いたい方は、前日までに電話予約を入れることを強くおすすめします)
いざ実食! 黄金色の輝きと香り
ホテルに持ち帰り、さっそく開封の儀を行いましょう。
ずっしりとした重みのある箱を開けると、紙ごしでも分かる甘く芳醇な卵の香りが漂ってきます。

包みを開くと現れたのは、きめ細かく、美しい黄金色に輝くカステラ。
表面の焼き色も均一で美しく、丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。
ナイフを入れると、指に伝わるその弾力。
最近流行りの「空気のようなふわふわ感」というよりは、「ふっくら」かつ「むっちり」という表現がしっくりくるような、密度の濃さを感じます。

絶妙な「ザラメ」の仕事ぶり
一口食べると、驚くほどの口どけの良さ。
パサつきなど微塵もなく、シフォンケーキのように軽やかでありながら、カステラ特有のコクと甘みが口いっぱいに広がります。
卵の風味がとにかく濃い!
長崎のカステラと比べると、蜂蜜の甘さよりも卵の風味が前面に出ているような印象を受けました。
そして特筆すべきは、底に敷かれたザラメです。
これがまた絶妙なバランス。
ガリガリと主張しすぎることはなく、口の中で生地と一緒に溶けていく中で、時折「ジャリッ」と小気味よい食感のアクセントを加えます。
このザラメが、甘さの余韻をキリッと引き締め、次の一口を誘うのです。
「一歩下がって夫を支える」と言われる山内一豊の妻・千代のような、奥ゆかしくも芯のある存在感(言い過ぎ?でもそれくらい重要なんです)。
牛乳とのペアリングが最強説
そのままでも十分美味しいですが、個人的におすすめなのが「冷たい牛乳」との組み合わせ。
カステラの卵の風味と、牛乳のコクが混ざり合い、口の中で極上のカスタードクリームのような味わいに変化します。
子供の頃におやつで食べたような、どこか懐かしく、それでいて贅沢なマリアージュ。
ぜひ試してみてください。
まとめ:これぞ「隠れた高知銘菓」
保存料などを使っていないため、賞味期限は夏場で3〜4日、冬場でも1週間程度と短めです。
さらに通販などもやっていないため、現地に行かなければ食べられない、まさに「幻の味」です。
有名店のカステラももちろん美味しいですが、手作りの温かみと、作り手の誠実さ、そして歴史の重みが伝わってくる山本のカステラは別格です。
大切な人へのお土産に(すぐに会えるなら)、そして旅の思い出として自分への最高のおやつに。
高知へ行かれる際は、ぜひ予約の電話を一本入れてみてください。
その一手間をかける価値は、十分にありますよ。


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